麺や 七彩
フィクションを越える!こねたて・打ち立ての麺を味わう喜多方ラーメン
静かなすごみのあるラーメンだ。間違いなくここでしか食べられない麺・味。東京に来たら、絶対食べて欲しい一杯だと、ぼくらは思う
なにがすごいのか?
まずは麺。よく考えてほしい、注文した瞬間に麺を打ちはじめるのだ。
そんな麺、食べたことあるだろうか。
ラーメン王として名高い石神氏は、まるで料理マンガの世界だと言わんばかりにこのスタイルを激賞する。[1]
もはやフィクションを超えた。僕はかつて、ラーメン漫画の原作に協力していたことがあったが、このアイデアを思いついたとしても現実的でないと却下しただろう
注文するたびに、小麦粉に水をあわせ、こねて、延べ棒でのばし、畳んで麺状に切る。見たことがあったようでなかった、一連の美しい動き。これが自分の注文のために行われるのだからたまらない。味わう前から高揚するばかりだ。
さて、味はどうか。正直に言うと、目の前で打っていた麺が運ばれてきたインパクトを期待して、一口目をすすると、少し違和感があった。ストレートな醤油と煮干しの濃い香り、いささかド直球・シンプルすぎる?
しかしそれは間違いだった。まずは例の麺。いわゆる「つるつる」「しこしこ」といった褒め言葉はまったく適さない。見た目はいびつ、歯ごたえも体験したことのない弾力。「ん?これは…?」と思わず噛み締めてしまう。
すると、食べたことのない「麺の味」がひろがるのだ。これが小麦の味というやつなのか。調べると、その場で打つ独特の製法、そして原料へのこだわり両方が、この麺をつくりあげているようだ。2016年のラーメンウォーカーでの記述[2]、そして先程の石神氏の記述の続きを引用する。[3]
オリジナルブレンドの国産小麦を使った麺は、小麦の甘味が感じられるなめらかで独特の食感が特徴
引用元『ラーメンウォーカーが厳選!マニアも納得の東京うまいラーメンベスト100』, 8頁, 2016年, KADOKAWA
「こねない、練らない、ねかせない」の “三ない“が麺づくりの極意だという。小麦の生産者と知り合ううちに、手打ちこそが小麦本来の持ち味をうまく引き出す手段と思い、この方法に行きついたのだ。
麺を味わっていると、先程シンプルすぎる?と感じたスープの違う側面が見えてくる。噛み締めた小麦の甘みが、煮干し・醤油の深みをひきだすような感覚だ。そうか、一口目のインパクトを味わうラーメンではなく、しみじみと旨みを感じるラーメンだったのか。それを裏付けるような情報が、料理研究家 神田賀子さんの記述にあった。[4]
あえて醤油べースに特化し、埼玉の銘醸として知られる「弓削多醤油」の非加熱無濾過吟醸純正醤油を賛沢に使ったスープは、日本人のDNAにしっくりと寄り添うような、しみじみとした味わい。
ぼくらが食べ終わるまで、お店の人はひたすら麺を打ち続けていた。閉店まで打ち続けるのだろう。とてつもない体力が必要なやり方に、あえてこだわる真摯な姿勢と、純朴な味わいに、かけがえのない価値を感じた
MAP
- PLACE
- 麺や 七彩
- TEL
- 03-5566-9355
- ACCESS
- 東京都中央区八丁堀2-13-2
- URL
- http://shichisai.com